「ラストメール」 その三十一 徳満耕史著

翌日から新しく気持ちを入れ替え、雑貨品の卸の仕事と共に、ホームページの作成のためにあちこちに足を運び取材することにも更に精をだした。

紗希は、長い間のストーカー君や変態オタク君からの呪縛から解放され、今までは自由にできなかった女友達との食事やショッピングを楽しんだ
家族と向き合う時間が増えて、この頃、紗希が楽しそうにしている姿に、ご両親もびっくりしている様子だった。

復帰した仕事は、順調に推移していた。
ホームページ製作の為の、取材も札幌近郊に限らず、函館・旭川・稚内・釧路・根室と北海道中を駆け回る様になってきた。

その為、お互いの空いた時間が合わず、あの夜の食事から一ヶ月程経っていた。
メーカーの商品を紗希に目利きしてもらい、お得意先へ卸す仕事も順調に売り上げを伸ばしていた。

紗希が勤めている今のインストラクターの仕事と同等以上の給料を渡せるくらいに収益も上がってきたので、紗希の気持ち次第では新しく事務所を構え、一緒に働いてもらうことも視野に入れるようになった。

『約束、忘れていない?』

お食事の後に約束したお泊りの件、放りっぱなしにされているけど忘れていない?!
今週の週末に泊まりに行っていいかしら・・・

『正直に言うと、俺も待ち遠しかった』

今週末は、道東に取材に行っているけど夜には戻る。
相変わらず、汚い部屋だけどそれでもいいならおいで。
ちゃんと、布団一組買っておいたから

『それは残念』

秀雄さんの腕枕に抱かれて眠りたいと思っていたのに。
でも、勝手に秀雄さんの布団に潜り込んじゃうからいいっか

『あれっ』

この前布団貸したら、臭くて眠れなかったって言ってた人は誰だっけ?

『本当は』

眠れなかったのは、恐くて興奮していたのと、秀雄さんの怪我が心配だったからよ。
本当は秀雄さんの布団の匂い。
少し汗臭い男らしい香りがして大好き。
前の彼は、変な匂いのコロン付けていたの、大嫌いな匂い!

『じゃあ』

じゃあ、紗希除けにコロンまいとくか・・

『意地悪』

そんな意地悪言うなら、あの日買ってもらった下着付けたのを見せてあげないから。

『初めて?!』

あの時、買った下着は付けていなかったの?

『そうよ』

あの時は秀雄さんのトランクスを履いていたままよ。
秀雄さんの物を身に付けていると安心できたから。
それに、お言葉に甘えて、あえて高い下着買ったのは、なんとなく秀雄さんとはお付き合いするかも知れないって予感がしたから・・
だから、新しい下着はもし結ばれることがあったらその時に初めて付けようと思ったの。
変態君になんかには、絶対に見せないわ・・・

『それは知らなかった』

でも、そんな紗希の下着姿見ちゃったら、我慢できなくて襲っちゃうかも知れないぞ!

『それが、狙いなの』

だって、秀雄さん。
私のこと指1本触れようとしないんだもん。
魅力無いのかな??って心配になっていたの・・

『やせ我慢をしていたのを知らないな』

紗希を見て、魅力がないって思う男なんてこの世に居ないよ。

週末、紗希が泊まりに来る事になったが、やらなくてはならないことが山程あり浮かれてばかりも居られなかった。

復帰した以前の仕事も、メーカーさん、お得意先双方とも次第に元にもどりつつあり一人では、こなしきれなくなってきた。

真剣に、紗希に専属で仕事を手伝ってもらわなくてはならないほど仕事の量も増えてきた。
すでにメーカーさんにも、お得意先にも以前から紗希のことは話してあったし、みんなからは、女神ちゃんと呼ばれていたので、即戦力になるのは間違いなかった。

今、自分の歳を考えると、もし紗希と真剣に付き合うとなれば、結婚も視野に入れる必要がある。
紗希に対して恋愛感情を持ってはいけないと考えたのは、やはり歳の差である。
そのために、いつも自分の気持ちにブレーキをかけてきた。

しかし、紗希とつき合うと決めたい以上、早く結婚して紗希の子供も産まないと、どんどん自分は老いてしまう。
年老いた父親だと子供が可愛そうだ。

そして、何より一番大切なのは、元妻や娘の気持ちも十分に考慮しなくてはならないことだった。

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