「ラストメール」 その三 徳満耕史著

「大丈夫ですか?」

声の主は、すでに逃げ去って、もうこの公園の中にはいないだろうと思っていた被害者の女性だった。

服の乱れは直していたが、髪や服は土と草で汚れいる。
ブラウスの前ボタンは全部飛ばされているのだろう・・・片手でブラウスを押さえている。

(歳は20代前半くらいだろうか?)

全体的にスラッとして細身ではあるけれども、胸の隆起は大きく、ファッション雑誌のモデルにも劣らないほどの容姿の持ち主だった。

軽くウェーブのかかった肩まで伸びた髪は、今時の若い女性にしては珍しい黒髪で、それがかえって清楚な色香を漂わせている。

こんな女性が、終電を過ぎた遅い時間の人気の無い公園を、薄いブラウス一枚の服装で歩くなど、自ら「レイプして下さい」と誘っているようなものだ。

「怪我はないかい?」

女性は黙ってうなずいた。

「なぜ、逃げなかったの?」

「こんな格好では人通りのあるところを一人では歩けないもの」

「家は近いの」

「車がないと、歩いて帰るには遠い所です」

確かに、この格好で人通りの多い駅前へ出て、タクシーを拾うことは無理だろう。
多くの人に好奇の目で見られるの耐え難いに違いない。

それに、この姿を家族に見せることは出来ない。
何が起こったかは一目瞭然だ。

帰りたくても帰れないのだ。

「その格好を近所の人に見られたら、嫁入り前のお嬢さんに変な噂を立てられるね。
それに、その格好で帰ったらご両親に無用な心配をかけるだけだし。
もし良ければ今日は俺のところに泊まって明日帰ったたら?
終電に乗り遅れたから友達のところに泊まることにして」

「助けていただいた上に、そのうえご迷惑をかけてもいいのかしら?」

「やもめ暮らしだから気にすることはない。
汚ない部屋だけど、それは我慢して。
この時間じゃ開いてる店はないから服を買うことも出来ないしね」

「ありがとうございます。
本当に申し訳ありませんが甘えさせて頂きますね」

女性は携帯電話を取り出し、自宅に電話した。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です