「ラストメール」 その二十三 徳満耕史著

『いつも、紗希のメールにはびっくりさせられる。』

俺だって、紗希から誘われたら、あっという間におちるよ。
でも、どんな理由をつけようとも今まで紗希がやってきたことは良くない事だ。
ストーカーや変態野朗と出会わなければ、紗希がこの様なことをする女性には、ならなかったかもしれないけど、それが免罪符になることはないと思う。
心を入れ替えて今までしてきたことの償いをしなくちゃならないね。

そんな折、先日挨拶回りした以前の会社のお得意先から電話が来た。

「下ちゃん、前に挨拶に来たくれた時に話した件、考えてくれた。
先に仕入れ代金払うから、下ちゃんの目利きで商品仕入れてって話。
取りあえず100万円用意したから、これで試しにやってみようよ」

「でも、前の様に売れる商品を仕入れられるかどうか、正直ちょっと自信がありません」

「だから前にも言ったように、下ちゃんが仕入れてきた商品は店長命令で、店員さんに集中して売るように指示するから大丈夫だって。
うちの店員さんのパワーは下ちゃんも知ってるじゃない。
人の好意は素直に受け取らなくちゃ駄目だよ」

「あまりに厚情なお話なので恐縮してしまいますが、そこまで言って下さるのであればご迷惑をお掛けしない様に頑張ってみます」

翌日、全国チェーンの大きな量販店にテナントとして入り雑貨店を営んでいる社長さんから現金100万を預かり、以前お世話になっていたメーカーに出向いた。

「社長様、厚顔なお願いではありますが、また商品を仕入れさせて頂いてよろしいでしょうか。
本来であれば、以前の債務をすべてお返ししてからでないと、新たなお取引は出来ない事は重々承知しております。
しかし、お得意先よりのご要望もあり、先日の社長様のお言葉に甘えて、のこのことお伺いした次第です」

「よく、来てくれた、待っていたよ。
前の残債は、貸し倒れ処理してあるからもう返す必要はないし、そんな水臭いことは言っこなし。
これからもまた、うちの商品をたくさん仕入れて、儲けさせてくれたらそれでいい」

「本当にありがとうございます。
本日100万円用意して来ましたので、その分だけ仕入れさせて頂きます」

「・・で、どうしたの、そのお金?」

「お得意先の店社長さんから、仕入れ資金にと前金で頂いてきたものです」

「やっぱり、下ちゃんの復帰を望んでいたのは、俺のほかにもいたんだな。
下ちゃんは、やっぱりこの業界では必要とされているのがよく判った。
現金なんか用意しなくて良いよ。
以前と同様、掛売りで構わないから、どんどん仕入れしてよ」

さっそく、商品を物色したけど何が売れるかさっぱり判らない。
以前であれば、直感でこれと、これと、これという様に悩まずに商品を選べたのに、ブランクの間にすっかり感が鈍ったようだ。
それと、前金でお金を預かっているため、絶対に売れる商品を選ばなくてはという責任感で、思い切った商品選定が出来ない。
迷って仕入れした商品は必ず売れ残る!というジンクスがあったので、結局何も仕入れせずに気になった商品をデジカメで写してその日は帰った。

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