「ラストメール」 その十六 徳満耕史著

私が、まだ高校生の頃、初めて男の人と付き合った人が、ストーカーだったの。
とにかく、いつも一緒に居なくては駄目な人で、学校の登下校も一緒、お休みの日も一日中一緒に居なくては気が済まないの。

服も、肌の露出の多い服は絶対に許してくれなかった。
だから、いつもデニムのパンツばっかり。
私服のスカーを着ることなんて一度も無かったわ。

年頃だから、おしゃれもしたかったのに許してもらえなかった。
例えば、クラスメイトの男の子と、ちょっとでも雑談すると、「お前、あの男に気があるんだろう」ってものすごく怒られて殴られた。

最初は、愛情表現だと思って我慢していたけど、愛情ではなく、ただのオモチャだとしか私を見ていない事に気がついたの。

それからは地獄だったわ。
会えば、必ずエッチさせられたけど『早くおわらないかなあ~』っていつも心の中で泣いていた。
だからその頃は、こんな辛いなら一生エッチなんてしなくてもいいと思っていた。

ストーカー君とは、高校を卒業して社会人になっても続いていたの。
何度も、別れ話を出したけど、その度に彼は逆上して・・・
殺されるかもしれないと思うほど恐い思いをしたわ。

逃げ出すと何処までも追いかけてきて、かくまってもらった人にも迷惑をかけてしまうこともあった。
私が勤めている会社や、私の実家や、パパの会社にまで電話して探しまくる人だったから。

周りの人にも、家族にもずいぶんと迷惑かけたし、私だけが我慢していれば騒ぎにはならないから、ストーカー君の言いなりになっていたの。

二度の妊娠も、もしこの人と一生付き合うことになっても、この人の子供だけは産みたくなくて、泣きながらおろしたわ。

そんな時に、出会ったのが今の彼。
命がけで、ストーカー君に別れ話をして、今の彼のところへ逃げたの。

その時は、今の彼が盾になってくれた。
彼にはずいぶんと迷惑をかけたし、本当に力になってもらったわ。

そんな思いをしてやっと別れる事が出来たのに、ストーカー君。
なんと、半年後には他の女の人と結婚したのよ。

偶然、街ですれ違った時、突然抱きついてきて「俺の本心は紗希と結婚したかったんだ。今の嫁さんとは別れるから、もう一度やり直さないか?!」って言われた時には、もう何も信じられなくなった。

やっぱり一緒なの、
男は。

今の彼は、ストーカー君とは違うけど、今度は変態オタク。
ただ、私の体を自由にしたいだけで、ストーカー君から救い出してくれただけ。

人のオモチャが羨ましくて、横取りして自分のオモチャにしたいだけだったの。
いろんな男の人から言い寄られたけど、結局はみんな男の人は同じね。

それが分ってからは、私は、彼の目を盗んでは色々な男の人と寝たのよ。
寝るのが目的ではなく、狙った獲物を墜とすことが目的。
誘いにのって、相手がその気になったら、一度だけ寝て終わり。

男性って一度寝たら、もう自分の女だって思い込んでしまうのね。
次も当然抱けると思って、その気になっている男の人に「あなたみたいな下手な人とは二度と寝たくないわ、バ~~カ」って言ってやるの。

そう言われた男の人はみるみる顔色が変るわ。
プライドがズタズタにされた、男の人のみじめな顔を見るって快感!

私って最低の悪魔でしょ。

私ね、本気で人を好きになったことが無いの。
愛情のあるエッチなんて嘘だと思っている。

どんなに、愛妻家の男の人でも、こっちからわざと隙を見せて誘えば必ず間違いをおかす。
男の人って所詮そんなもの、紳士のふりをしても結局は同じ生き物。

どうせ、男の人はみんな同じだから、きっとまた裏切られる。
もう、傷つくのは嫌。

だから、秀雄さんのことも、心のどこかでは信用していないの。
ごめんなさい、女神の正体がこんな悪魔で。

メールを読み終えて、しばらく呆然とした。
直ぐには、返事を書くことが出来ずに、返事を書いたのはその日の夜だった。

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