「ラストメール」 その十七 徳満耕史著

『メール読んだよ』

正直、今どのように返事をして良いものかとても混乱している。
この部屋で美味しい朝食を作ってくれた紗希と、メールに書かれている紗希がどうしても一致しない。

ただハッキリ言えるのは、メールに書かれてあったストーカー男は最低な奴だし、今の彼の変態という奴は、よく分からないけど、一刻も早く別れた方が良い。

紗希がいうように確かに、男は皆同じだと思う。
愛している人がいても、他の女性を抱きたいと思うし、好きでも無い女性を抱きたいがために好きなふりをすることもあると思う。
それは、否定出来ない。
でも、それを実際に行動に移すかどうかは、その人の資質だ。
心の中で妄想を抱いても、理性のブレーキをかけて行動に移さない男の人の方が圧倒的多いと思う。

俺は、理性のブレーキが弱い男だから、紗希から誘われたら、一も二も無く陥落する男の一人だけど。
紗希が思っている通り、俺だって信用出来ない男だよ。

紗希は自分のことを悪魔って言うけど、人間は誰でも似たような本能を持っていると思う。
思春期にストーカー男と出会って、その強いトラウマが、紗希を悪魔の女にしてしまったのだと俺は思う。

あの日の夜、俺の部屋に泊まった時、偏に落ち着いた感じがしたのは、異常な男性関係の中で、特別な男性観が備わっていたからだね。

でも、紗希のことを可哀想だとは思っても嫌な女だとは思えない。
今、俺が紗希にしてあげられる事ってなんだろう。

直ぐに、紗希から返事のメールが来た。

『返事、本当にありがとう。』

メールありがとうございます。
悪魔の私を知ったら、もう返事は来ないかも知れないとずっと心配していました。
昨日の夜、メール送信してからずっとパソコンの前で秀雄さんからの返事のメール待っていたのよ。
でも、朝になっても昼になってもメールが来ないから、きっと「嫌われてしまった」と、とても切ない思いをしていました。
そうしたら、今メール来たでしょう!
読まないうちに泣いちゃった。
ごめんなさい。

私の過去や、悪魔の私のことを書いたメールなんて読んでいても、ちっとも楽しく無かったでしょう?!
メールに書いたことは今まで誰にも話したことはないの。
ずっと、私の胸の中にだけにしまっていた・・・
嫌われてもいいから、本当のことを知ってもらおうと思ったのは初めて。
だから秀雄さんはちょっと違う。
絶対に、男の人に心を開くことはないと思っていたのに、秀雄さんなら信じてもいいのかなと思い始めているの。

私、分かったの。
秀雄さんは私以外の誰かを好きになっても構わないわ。
だって、悪魔と付き合ってなんて私から言えないもの。
でも、私のそばにずっと居て欲しい人だって。

『紗希がなんであろうと』

嫌いになんかはならないよ。
紗希が俺にとって幸運の女神さんと思っていることは、今でも全く変わらない。

『秀雄さんの言葉を信じても良いの?』

本当に、もう返事が来なくなったらどうしようと思っていたのよ。
でも、本当の自分を隠してメールを続けることは秀雄さんには出来なかった。
嫌われてもいいから本当のことを、話しておかなくてはいけないって決心したの。

『嬉しかったよ』

今まで、誰にも話したことのない過去を正直に話してくれて。
ちょっと胸のつかえが取れたんじゃない?

『私の過去を』

正直に話すことが出来て、秀雄さんが言うとおりすっきりした。
でもそれよりも、秀雄さんが私から離れて行かなくてすごく嬉しかったし安心しました。
まだ、今の彼、変態オタク君の話はしていないけど、今日は止めておきますね。

ストーカー君と同じくらいヘビーだから、秀雄さんにお話するのは日を改めます。
明日も秀雄さんにとっていい日でありますように!
おやすみなさい。

紗希